『深い夜の果てに』

 

ベルタ・シュミットエラー著  岸本紘訳
朗読:小川政弘

【第10回〜第18回】

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●第10回

ゲオルクは、もう一度弁護士に相談して、ローゼが同意しない限り、彼女と別れる道はないと知り、ある日、意を決して彼女を部屋に呼び、離婚の話を切り出します。明らかにショックを受けた彼女は、1日2日時間が欲しいと言います。ゲオルクは、この離婚に反対のブリギッテとも話さねばと思い、彼女の勤務時間が終わる夜8時過ぎまで病院で待とうと、自宅をあとにするのですが…。

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●第11回

勤務が終わって家に帰るブリギッテを待ち構えていたゲオルクは、彼女の家に入り込むと、熱に浮かされたように、妻と別れて彼女と新生活を始めたいという思いをぶちまけます。その彼の情熱に、彼の家庭を壊したくないという彼女の思いも、崩れそうになります。その時、病院から、急患のためすぐ病院に来てほしいとの使いが。先に出た彼女を追おうとした彼は、見回りに来た家主に外からカギをかけられ、家の中に閉じ込められてしまうのです。彼を待っているひん死の患者がいるのに…。

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●第12回

急いで病院の手術室に入ったブリギッテは、早速ひん死の青年患者の手当てに当たりながらも、一向に姿を見せないゲオルクに、「何があったのか」と不安を募らせます。意を決した彼女は、彼の自宅に電話をしてみますが、相手の声は息子で、もちろん彼はいません。この青年を救うには、ゲオルクの熟練した腕で手術をすることが必要なのです。それも、今すぐに。それなのに、今彼はどこに?

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●第13回

ローゼマリーは子供たちと父親のいない夕食を済ませました。子供たち3人は、自分とゲオルクの間がもはや冷え切って、最終的段階を迎えていることを何も知りません。夕食後、娘たち2人は友達のところへ遊びに行き、息子のヘルムートは頭痛を訴えて自分の部屋に退きます。ローゼの心を満たす底知れぬせきりょう寂寥感。意を決した彼女は、ヘルムートの部屋に入り、驚く彼に夫との離婚のことを打ち明けます。そこへ病院からの電話が入り、緊急の患者が運び込まれたのに夫が見えないと告げるのです…。

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●第14回

母の、父との離婚話を聞いて、動揺する息子のヘルムート。そこへまた病院から父の不在を知らせる電話がありますが、相手は母が疑った当の相手のブリギッテでした。ヘルムートは安心して母を慰めます。自分の部屋に戻ろうとしたローゼは、カギがかかっていることに気づき、やっと事態がのみ込めます。「ゲオルクは閉じ込められていたのね。」患者の死に心身ともに疲れた彼女は、「人の罪の身代わりに死なれたイエス・キリストのことを考えて」と言って、彼を送り出します。病院に戻った彼は、なぜか「罪」の問題が心から離れません。「閉じ込められて患者を救えなくても、罪になるのか?」と…

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●第15回

ゲオルクは、霊安室で、亡くなった患者の年老いた母親に会います。悲しみ嘆く彼女を見ながら、改めて彼はブリギッテが言った”罪”という言葉を思い出すのでした。昼ごろ、疲れて横になっていた彼のところに、息子のヘルムートが痛む手を見てもらいにやってきますが、「誰にも会わない」という彼の言葉に、帰っていきます。翌朝、彼は手術に立ち会うはずのブリギッテが、いないことに気づきます。娘のことで急用ができて旅立ったというのです。幾つかの手術の間も、彼の心は彼女への思いでいっぱいでした。何としても彼女に会いたくなったゲオルクは、2日間留守にするとスタッフに告げて、彼女のあとを追うのでした。

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●第16回

父親に会うのを断られたヘルムートは仕方なく家に帰ります。そのことを知らないローゼは息子の手の傷を心配しますが、内心、ゆうべの離婚話を気にしているのではないかとも思って、心を痛めるのでした。ヘルムートは、父親の診察室に入って、手の消毒を済ませると、何も考えないように書物に没頭します。コーヒーを用意したメイドのレーナにも、「母には手のことは言わないで」とくぎを刺し、母の前でも元気なふうを装います。こうして、夫であり父であるゲオルクのいない家庭で、母と息子は、お互いにいたわり合いながら、不安な一夜を過ごすのでした。

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●第17回

ローゼは思い余って病院の夫ゲオルクに電話しますが、彼はまだ旅行から戻っていません。手の傷で、ソファーに横になっている息子のヘルムートに、そのことを告げたあと、彼女は息子の傷をだれか病院の医者に診てもらわなければと言いますが、息子は自分の手のことよりも、ほかの女性を好きになって母と別れようとしている父が許せません。でも、母としてどうしても息子の傷が気になるローゼは、再度病院のヴェンデル医師に電話し、息子の往診を頼みます。夜、雪の中を駆けつけたヴェンデル医師は、やつれたローゼに驚きながら、ヘルムートの寝室に向かうのですが…。

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●第18回

ヘルムートの部屋に入って、彼の右手をすばやく観察したヴェンデル医師は、事態が容易ならざる状況であることに気づきます。彼はローゼを部屋の外に連れ出すと、すぐにヘルムートを病院に運び、緊急手術で彼の右手を切断することによって、かろうじて一命を取り留めることはできると告げます。驚きに言葉を失うローゼ。こんな時に、父親は行方知れずなのです。父の執刀でなければ嫌だと言うヘルムートをしかり飛ばして、3人は病院へ向かいます。一方ゲオルクは、車を走らせて4時間あまり、夕やみの迫るころ、ハルツ地方の小さな町で、目指すブリギッテの家を訪ねだし、再会するのですが…。

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